サイト分割で圧倒的な結果を出した米About.comの事例

あらゆるテーマを扱う総合的な生活情報サイト・About.com(日本版はAll About)は、2016年ごろから特定のテーマ毎に分割され、複数のバーティカルメディアへとリニューアルされました。

1つのサイトで生活全般の情報を扱うのではなく、特定のテーマに特化した専門的なサイトを複数運営する戦略に切り替えたことで、大きな成功を収めた同社は、SEOの成功事例として業界の注目を集めています。

この記事では、SEOとコンテンツマーケティングに関するブログ「Searchmetrics」に掲載された解説記事を元に、About.comがテーマごとにサイトを分割することでどのような成果を上げたのか紹介します。

出典:Unwrapping the Secrets of SEO: How About.com Got Its Groove Back With Domain Splitting

About.comの凋落と興隆

かつて、About.comは世界で最も成功したウェブサイトの一つでした。

しかし、一方でAbout.comは(専門家が記事を執筆しているにも関わらず)大量生産された低品質な記事を詰め込んだ雑多なサイト(いわゆる「コンテンツファーム」)を連想させるサイトでもありました。

2011年のパンダアップデート(Googleのアルゴリズム変更)を皮切りに、About.comはSEO面で弱くなり、凋落を始めました。

2016年、About.comは凋落を続ける状況を改善するために、サイトを解体・分割し、専門的なバーティカルメディアにリニューアルする事を決定しました。その事について、CEOのNeil Vogel氏はこう言います。

90年代には、人々が規模を信頼していた時代がありました。

しかし、今は違います。信頼されるブランドは、スペシャリティブランドです。

私たちは、専門店に分割する必要があったデパートなのです。

出典:‘Burn the boats’: About.com begins unbundling, starting with health – Digiday

こうして、総合的な生活情報サイトだったAbout.comは、記事の更新・改善と共に、6つのバーティカルサイトに順次分割されました。

以下の6つがAbout.comの分割によって誕生したサイトとそれぞれが扱っているテーマ、開始時期です。

  • Verywell(健康、2016年5月)
  • The Balance(お金・仕事、2016年9月)
  • Lifewire(デジタル家電、2016年11月)
  • The Spruce(生活・DIY、2017年3月)
  • ThoughtCo(学習サイト、2017年3月)
  • TripSavvy(旅行、2017年6月)

*サイト名や扱うテーマは当時のもの。

これらのサイトは全て独自のドメインを持っており、About.comからリダイレクトされています。

また、このサイト分割・改善を行う際、これら6つのサイト(テーマ)に合わず、また品質も低い記事は全て削除されました。

CEOのインタビューによると、元々About.comには120万のコンテンツがありましたが、そのうち90万のコンテンツを削除し、新サイトに移行されたのは30万ほどだそうです。

クオリティが高く、また長期間価値がある(速報性が無い)記事を厳選した結果です。

さらに、会社自体も「About.com」から「Dotdash(ドットダッシュ)」へとリブランドされました

リニューアルによって大幅な成果が

About.comのドメイン分割は非常に上手くいきました。

以下のグラフは、彼らのリニューアルがいかにうまくいったかを示しています。新しいサイト(ドメイン)のSEO Visibility(≒検索でどれだけ上位表示されるか)が大幅に上昇していることが、それを物語っています。

About.comが6つのバーティカルサイトに

お金や仕事に関するサイト・The Balance(thebalance.com)だけで、About.com時代のSEO Visibilityを超えていることが分かります。大成功ですね。

なお、このグラフを見ると、最後の方でほとんどどのサイトでグラフが大幅に下降していますが、これには理由があります。それが後述するドメインのさらなる分割です。

2018年、ブランドはそのままに、さらにドメインを分割

About.comはリニューアルで以下の6つのバーティカルサイトに分割されました。

  • Verywell(健康)
  • The Balance(お金・仕事)
  • Lifewire(デジタル家電)
  • The Spruce(生活・DIY)
  • ThoughtCo(学習サイト)
  • TripSavvy(旅行)

Dotdashは、このうち、Verywell、The Balance、The Spruceの3つのサイトをさらに分割し、よりテーマを絞ったサイトを作りました。

健康:Verywell

健康について扱うサイト・Verywellは、「Verywell」という基本的なブランド名はそのままに、以下の4つのサイトに分割されました。

  • Verywell Health(健康)
  • Verywell Mind(メンタル)
  • Verywell Fit(運動、トレーニング)
  • Verywell Family(妊娠、子供の健康、子育て)

これらは全て完全に別のドメインとなっています。

Verywellの分割は、バーティカルサイトのさらなる分割の中で、最も成功しています。

グラフを見ると、新しいサイト群は、2017年初頭のピーク時のVerywell(verywell.com)の3倍以上のSEO Visibilityを持っています。

お金と仕事:The Balance

お金と仕事の情報サイト・The Balanceは、メインブランドの「The Balance(thebalance.com)」のサイトを残しつつ、さらにキャリア、小規模ビジネス、日々のファイナンスに関する情報をスピンオフし、以下の3つのサイトを作りました。スピンオフしました。

  • The Balance Careers
  • The Balance Small Business
  • The Balance Everyday

生活・暮らし:The Spruce

生活や暮らしに関する情報サイト・The Spruceも、レシピ、ペット、DIYの情報を切り出し、メインサイトのThe Spruce(thespruce.com)のサブブランドとして、以下の3つのドメインが登場しました。

  • The Spruce Eats
  • The Spruce Pets
  • The Spruce Crafts

これらはVerywellのように、まだ結果は出ていません。

むしろ、コンテンツを移行したことで混乱が生じ、一時的にGoogleやBingなど、プラットフォームからのアクセスが減っています。

しかし、サイトはゆっくりと成長しており、少しづつ分割前の元の水準に戻っていると、CEOのVogel氏は言います

テーマを特化した専門サイト(バーティカルメディア)の台頭

特定のテーマに特化した専門サイト(バーティカルメディア)は、様々なテーマのコンテンツを持つ雑多なサイトよりも優れたパフォーマンスを発揮します。

サイトを特定のテーマに特化させることで、ユーザーの希望や要望を満たす可能性が高くなります。

この点を踏まえ、SEOとコンテンツマーケティングに関するブログ「Searchmetrics」は、DotdashによるAbout.comのサイト分割(ドメイン分割)について、3つの考察を記しています。

1. 損失を最小限に抑えるクリーンなドメイン分割

今回のドメイン分割は、非常にスムーズに行われました。

これにより、SEO Visibilityは分割前の水準を回復し、それを上回ることができただけでなく、各キーワードの順位も急速に回復しています。

2. ドメイン分割により、自社サイト間のユーザーの移動が活発に

ドメインを分割しても、それぞれのサイトが無関係になる訳ではありません。別のサイトへリンクを貼る事で、ユーザーがDotdashの別のサイトへ簡単にアクセスが可能になっています。

これにより、ユーザーはDotdashが運営するウェブサイト間で移動するようになり、直帰(サイトにアクセスした後、Googleの検索結果に戻る事)が少なくなります。

以下はVerywell Family(verywellfamily.com)に出入りするドメイン間のトラフィック(アクセス)の流れを示しています(データはSimilarWebより)。

Verywellブランドのサイト間でユーザーが移動していることが良く分かりますね。

3. 専門サイト(バーティカルメディア)の復活

様々な情報を網羅した総合的な情報サイトやポータルサイトの業績が悪化していたのは、About.comだけではありません。

ehow.comや一般的なQ&Aサイト等も、過去数年間、着実にアクセスの減少を経験しています。

今、私たちが見ているのは、専門的なサイト(バーティカルメディア)の復活です。

扱うテーマを1つ絞った専門的な情報サイトがユーザーに選ばれ、Googleに評価されるという事です。

まとめ

日本では今(2022年)でも、Yahoo! JAPANが圧倒的な強さを持っていますが、今後は日本の大手メディアの間でも、扱う情報を絞った専門的なサイトが評価されるようになるかもしれません。

サイトのテーマを絞るというのは、アフィリエイターの間では常識でしたが、ブロガーやYouTuber、メディアの間ではまだあまりその重要性が知られていないかもしれません。

皆さんも、小規模であれ、大規模であれ、何かメディアを作りたいと思っているのなら、About.com 改めDotdashの事例を参考にしてみてはいかがでしょうか?